GoldenPhoenixRecords

Rachelle・水沢よりアナタへ

Chapter 0: The Awakening

注)以下の内容が事実であるかフィクションであるかは、読者のご判断にお任せいたします。

 

※インタビュアー本人による書き起こしに依る

 

こんばんは、フリーライターのゴードン村田です。

今日はこのブログの主であるレイチェル・水沢さんのプロデュースによりデビューすることになったボーイバンド「Brand New Animals」について、彼ら5人と水沢さんをお招きしてインタビューさせていただきます。

皆さんが到着するまでの間、簡単にこのBrand New Animals(以下BNA)についてご紹介いたします。

彼らは去年の『バンド・オフ!』(※1)にて3位を獲得した5人組ボーイバンドです。番組出場中からSNS等で話題となり今後の活躍が期待されていた彼らが、この度番組のセレブジャッジの一人でありプロデューサー、シンガーソングライター、脚本家、小説家、人気ブロガー等様々な分野で活躍されているレイチェル・水沢氏が主催するGolden Phoenix Recordsと契約、晴れてデビューすることとなりました。現在はファーストアルバムを制作中ですが、アルバム完成を前に先日6曲入りのEPがサプライズリリースされました。

番組終了以降、メディアへの露出を最小限に抑えていた彼らがEPをリリースにあたり、今回特別にインタビューにお答えいただけることとなりました。

今夜は最新のBNAの魅力に迫りたいと思います。

 

『Overdosing My Mistaking』について

ー 本日はお忙しい中、こうしてインタビューをさせていただけてとても嬉しいです。

レイチェル・水沢(以下水):こちらこそとても嬉しいわ。アタシもBNAのボーイズも、こうしてデビュー作を世に出せることにとても興奮しているの。今日はこのコ達と一緒にとことん質問に答えさせていただくわ。

ディエゴ・ヴァン・アンダーソン(以下D):ミズの言う通りだ。インタビューは『バンド・オフ!』出演時にたくさん受けたけど、こうやって自分達の作品をもとに質問されるのは初めてだからな。すごく興奮してる。

ー ありがとうございます。ディエゴ。早速ですが、EPのオープニングを飾るあなたのソロ曲についてお伺いします。

D:最初にちょっと訂正させてくれ。一応このEPは俺ら5人のソロ曲とグループとしての1曲っていう触れ込みにはなってるけど、メインはそれぞれのメンバーが歌いつつもコーラスやフェイクはところどころ他のメンバーも歌っている。「Overdosing~」も言ってみればDiego Van Anderson Featuring BNAの曲ってところかな。

ー 確かに、先ほど全ての曲を聴かせていただきましたが表記アーティストになっている皆さんメンバー以外の声も聴こえるなと思いました。実は後でそれも質問しようと思っていたんです。

D:手間を省かせてしまって悪かったな(笑)。

ー いえ、とんでもない。

D:最初にプロデューサーのミズからこの曲が送られてきた時、正直言ってだいぶやる気を削がれたよ。なんてったって俺が目指すのはフアネスやプリンス・ロイス、マルマみたいなラテン色の強い音を鳴らすアーティストだったからな。「年末に発売を控えているファーストアルバムのリリース前にメンバーの紹介がてら、各々の個性が出ているソロ曲を収録したEPをリリースする」って話を初めて聞いた時、俺は完全にレゲトンダンスホールR&Bを歌うつもりでいた。けどミズの考えは違った。彼女はファーストアルバムのレコーディング中の俺の声や歌い方から、俺にはゴリゴリのロックが似合うって思いついたんだ。

スカイラー・ウエスト(以下S):はじめて曲のデモを聴いた時のディエゴの顔を見せたいですよ。眉の間にシワを寄せて口をポカンと開けて(笑)

ー 皆さん一緒にデモを聴かれたんですね。

D:アルバムのレコーディングの最後の方で、ミズが俺らにそれぞれイヤフォンの刺さったiPod miniを渡してきたんだ。どれも、俺らのソロ曲一曲のデモだけが入っててさ。みんなで同時に自分達のソロ曲を聴いたんだ。

ティモシー・ベディングフィールド(以下T):水沢さんは、カメラの前でも後ろでも常にシアトリカルなんです。iPod miniの色もそれぞれ僕らの好きな5色にわけてたし。

S:あれを一つ一つ同期してたって考えると面白いよね(笑)

ー ディエゴ、ロックを歌うことについて最初は抵抗があったんですね。

D:ああ、あったね。けどミズはそういうことも全部織り込み済みで俺にこの曲を歌わせようとしたんだ。俺一人だけでは気付けなかった新たな可能性を示してくれた。今では彼女の判断に感謝しているよ。実際、最初の印象としてはかなりカッコいい曲だとは思ったからな。自分に合っているかどうかは別として。

ー クレジットを確認すると、水沢さんと共同ライターとなってますが。

D:「歌詞はあなた達が歌いやすいように変えていいわよ」って言ってくれたから、好きなようにさせてもらった。『ザ・ライト・スタッフ』(※2)での挫折経験を少し歌詞に入れることで、ミズが持ってきたデモよりもグッと歌いやすくなったよ。

ー 『ザ・ライト・スタッフ』に応募されてたんですか?

D:『バンド・オフ!』のオーディションに参加するきっかけになったのも『ザ・ライト・スタッフ』に落ちたからだしな、あんまり言いたくなかったけど。とにかく、もらったデモを聴き込んで歌詞を変えて歌ってみたらなんだかすごく自分にしっくり来たんだ。これからグループとして活動していくわけだし、自分一人では思いつかないようなアイデアを提示されることで自分自身の限界を押し広げていけるって考えれば他人の意見を一度素直に聞いてみるってのは大事だなって思ったよ。

アンソニー・シンプソン(以下A):『バンド・オフ!』の最中はずっと「もっと俺らしい曲もやりたい」って言ってたディエゴが、成長したよね。

D:俺は今でもラテンミュージックをやりたいけどな。色々やってみるのは大事だってだけで、音楽の趣味を変えた覚えはないからな。

ー 水沢さん、この曲のインスピレーションを教えてください。

水:元々ディエゴにはロック調の曲を歌ってほしかったんだけど、ロックな曲を書こうと思った時に、往年のスタジアムロックみたいなカタルシスを生み出せるアンセムにしたいと思ったの。例えばTears For Fearsの「Everybody Wants to Rule The World」やMuseの「Uprising」みたいな。ああいうミドルテンポだけど勇ましいビートが効いている曲が大好きなのよね。それでいて尚且つライブで拳をふるいあげられるような力強い曲にしたかった。自身のソングライティングにも、ディエゴのボーカルにもとても満足しているわ。

 

 

『Wasting Love Songs』について

ー 次の曲について伺います。「Wasting Love Songs」はティモシー・ベディングフィールドさんの曲ですね。

T:そうです。

水:最初この曲と「If You Ask Me To」とどっちを彼に歌ってもらうか迷ったんだけど、アルバムのレコーディング中に、たまたま両方の曲に似た曲を録音したの。「If You Ask Me To」に似た曲はティミーがメイン、「Wasting Love Song」に似た曲はスカイラーがメイン。結果的に両方ともすごく良い感じになったんだけれど、その時に二人には似たところがあるって気づいたのよ。グループのケミストリーをより濃くするためにも、二人にはお互いの音楽性をよりよく理解してほしくて、今回の采配に至ったってわけ。

T:番組に参加する前からカントリーは好きなジャンルだったから、自分のカントリーな一面をこうして出せることが嬉しいです。デビューアルバムはもっとジャンルレスでポップなものなので、こうしたジャンルがハッキリしている曲をレコーディングしたのは新鮮でした。

S:僕はカントリーでもファンキーなポップでも問題なく歌えるからね~。

D:ティミーはカメラの前でも後ろでも物静かだから、最初は本当にこの曲を気に入ってるのか謎だったぜ。カントリーサウンドだけど歌詞の内容は恋愛についてだし。最年少でまだロクな恋愛経験のないティミーに歌いこなせると判断したミズはやっぱり先見の明があるなと思う。

ー ところで、番組でも前に出て話すのはディエゴとスカイラーが多かったですね。

S:ティミーとケンイチはカメラの前では物静かだけど、僕らだけでいる時とかは結構はしゃいでるよ。僕もディエゴもスポークスパーソンみたいな感じになっちゃってるけど、話してる内容は割と全員が普段から共通としている認識に基いてることが多いはずだよ。

ケンイチ・マスナカ(以下K):君らがひっきりなしに喋るからなかなかタイミングがないだけなんだけどね(笑)。

ー ティモシー、この曲もあなたが共同ライターにクレジットされていますね。

T:そうなんです。正直この曲に関してはクレジットを分けてもらうのが申し訳ないくらい、ほとんど変わってないんですけどね。僕が変えたのは歌いづらかった単語を同じ意味で別の表現にちょっと変えた程度なので。

水:それだって立派なアート表現よ。自分の声で、言葉で伝えることがどれほど大切なことか。最後に歌うのはあなたの声なんだから、そのあなたの声が少しでも「こっちの方がいいな」と思う言葉に変えたいというのであればそれはもう立派な「表現」よ。自信を持ちなさい、ティモシー・ベディングフィールド。

T:はい(笑)。

D:ミズはプロデューサーというより学校の先生みたいだよな。

水:あなた達がまだ発展途上だからそう感じるのよ。伸びしろを感じさせてくれるからこそ、こうして色々と口うるさく言いたくなるの。

ー 水沢さん、この曲はどういったインスピレーションで。

水:カントリーのバラードって、割と似たコード進行の曲が多いのよね。それに気づいた時に「アタシなりのカントリーを書いてみようかな」って思ったの。Tim McGrawとTaylor Swiftの「Highway Don’t Care」が頭のどこかに残ってたのかなって思うメロディになったけど、Carrie Underwoodの「Heartbeat」、Keith Urbanの「Cop Car」、その他いろんなカントリーバラードを参考にしたわ。

 

 

『If You Ask Me To』について

ー 次の曲について伺います。スカイラー?

S:はいはいはい。この曲はすごく歌いやすかったです。リズム感も良いし歌詞の内容も強めだし。

水:この曲は、元々アタシがすごく若い頃に半分くらいだけ作ってた曲だったんだけど自分でリリースするチャンスをなんとなく逃してしまってて。けどすごくパーソナルな曲だったから彼らのアルバムに入れるのもどうかなぁって迷ってたのね。その時に今回のEPのアイデアを思いついて。アタシが初めてこの曲を思いついた時と同じくらい若くてフレッシュな彼らに歌ってもらいたいっていう思いはあったから、この際こうしてソロ曲集みたいなものを作ってそこで新しい命が吹き込まれるかなって。

ー この曲があったからこそこのEPが生まれたと言っても過言ではない、と。

水:そうね、まあそんなところよ。

S:水沢さん、ソロ曲のデモを僕らが聴いた後に僕にだけはなんか神妙な顔で「この曲を頼んだわね」って言ってきて。相変わらずシアトリカルだなって思ったけれど、同時にそれだけこの曲に対して本気なんだなって思いましたね。

水:あら、アタシはいつだって本気よ。

S:いやぁ、この曲に対する熱量は別格でしたよ。僕、この曲だけ他の曲に比べてめちゃめちゃ録り直しさせられた気がしますもん。

A:確かに、スカイラーの歌の技術はとても高いからあんなにたくさんのテイクを録るなんてこと、バンドのアルバム録音中はなかったもんね。

S:ほんとほんと。多分未使用のテイクだけを使ってもう一つ別バージョンを作れるくらいいろんなパターン録りましたよ。

水:そんなにたくさん使い物になるテイクはなかったわよ。ちなみにこの曲はMaroon 5みたいな曲を書きたくて鼻歌を歌ってたら出来上がったメロディに時間をかけて肉付けしていったのよ。書いた当時は無意識だったんだけど、コーラスの導入部分が彼らの「The Sun」って曲に似てるのよね。訴えられないかしら。

S:その前にGavin Degrawに訴えられないといいね。僕はピアノのリズム感が彼の「Chariot」そっくりだと思ったよ。

 

 

『むこうまで』について

ー 次はケンイチさんの楽曲について伺います。

K:実はこの曲だけ、水沢と僕で一から一緒に書いた曲なんです。水沢さんは日本にルーツがあるとは言っても元々アメリカやイギリスで活躍するプロデューサーなので、日本人である僕が共感しやすいメロディや歌詞を作るために日本人である僕の感情を大事にしてくださって。

水:アタシにとっても中々な挑戦だったけれど、すごく良い経験になったわ。今ホットな日本人のポップアーティストをケンイチから色々教えてもらえたし。

ー そうすると歌詞はケンイチさん、メロディは水沢さんが書かれた?

水:そうでもないのよね。アタシも父が日本人だったから日本語はある程度話せるから、歌詞も半分は書いたわね。逆にケンイチはメロディのアイデアをいっぱい出してくれて。コーラスの前で少し切ない香りが出てくるのはケンイチのアイデアよ。

K:英語のポップスにもよくあることなんですけど、「ポップミュージックでよくある歌詞のフレーズ」ってあるじゃないですか。僕はそういうお洒落で大仰な表現は苦手なので、日本人アーティストの槇原敬之さんの曲とかを参考にしながら書きました、日本で兄と二人で暮らしていた時のことを思い出したりしながら自分の人生に根差した内容で。(※3)。

D:ケンイチは普段おとなしい割りに音楽のことになるとまるで別人みたいになるんだよな。

S:それだけアーティストとしての軸がハッキリしてるってことじゃないかな。僕なんかはもらったデモを聴いて、「かっこいい曲じゃーん、歌う歌う」くらいしか思わなかったし。俺はケンイチのそういう我の強いところ、いいと思う。

K:水沢さんが作ってくれるデモは完成度がすごく高いんです。曲はそのまま水沢さんの曲として発表しても申し分ないくらいに。曲は水沢さんと一緒に書きましたけど、アレンジはデモのものをほとんどそのまま使いました。水沢さんが歌っているデモを聴いたらビックリしますよ。そのまま水沢さんの曲としてリリース出来るくらいの完成度で。

ー 私は日本語はわからないのですが、言葉のリズムなどはイギリスのシンガーソングライター風で好きですよ。現在制作中のアルバムでも日本語で歌われているパートがあるんですか?

K:アルバムは全編英語で歌ってます。少なくとも今のところは、、、

A:ケンイチは日本語で歌っている時の方が活き活きとしてるんだよなぁ。僕は日本語のパートを入れてもいいかなとは思う。ケンイチの良さが引き立つし、新鮮だよね。

K:英語で歌うのも好きだし楽しいよ。これからもっとうまくなっていきたいと思います。この先グループとして長いこと活動していくのであれば、コーラスワークも必要になってくるし、その時にみんなの足を引っ張りたくないな、って思います。

ー しかし、普段ご自身のみで曲を作る水沢さんが、デモの段階で他の人と一緒に曲を書くのは珍しいのでは。

水:ケンイチはまだアメリカに来て2年でしょ。それでここまで上り詰めたんだもの、相当の努力家だと思ったわ。だからアタシも彼の努力と才能に報いられる楽曲を作りたかったの。日本のアーティストの曲をたくさん聴いたけど、この曲のインスピレーションになったのは2001年に発表された曲なの。スガシカオさんっていう日本のアーティストがいてね。彼の「そろそろいかなくちゃ」っていう曲のメロディがなぜかすごく心に残って。ケンイチに聴かせたらすぐにインスピレーションを受けたみたいで、スタジオのピアノを弾き出したんだけど途中でいきなり泣き始めちゃって。

K:あの曲、コーラスの部分が音が4つだけなんです。それなのにすごく深くて濃い内容の曲になっていて。なんというか、曲の中に宇宙を見た気がしたというか。それでつい感極まってしまって。

S:ケンはすぐに感極まるよな。他にもさー

水:こら、余計なことは言わないの。インタビューを続けましょう。

 

『Another Sex』について

ー アンソニー、あなたの曲について聞かせてください。

A:R&Bは元々すごく好きなジャンルなんだ。僕らの先輩グループにあたる「ティーチング・サーカス」(※4)のカタログの中にもR&Bっぽい曲がいくつかあるけれど、その中でも「Dancing For Me」という曲はあのハーモニー・サミュエルズが書いていて。マックス・マーティンやウェイン・ヘクターといったポップ畑のヒットメイカー達の曲だけでなく、コアなR&Bや、それこそディエゴのロックやレゲトンみたいに、いろんなジャンルを歌えるティーチング・サーカスみたいなグループになりたいなと思って。

ー 番組でもマーヴィン・ゲイスティーヴィー・ワンダー、ニーヨなどを歌われていましたよね。

A:そうなんです。R&Bの中でもメロディがハッキリとしていて、鼻歌でもなんの曲かがわかるような楽曲がすごく好きなんだよね。

水:彼の場合、自分の歌いたいものに対するビジョンがすごくハッキリしていたのよね。アルバムでも、歌い方が自然とR&Bっぽくなるの。これは天賦の才よ。最初はグループのハーモニーを考えるとクセが強いかなと思ったんだけれど、彼ほどR&Bとポップスのヴァイブスをうまく合わせられるコはそうはいないわね。

D:なんかミズ、アンソニーには甘くないか?

水:そうかしら。もしかしたら年長の彼がディエゴやスカイラーに比べてしっかりしているからかもしれないわね。けどあなたの歌うロックには情熱がほとばしっていていつも聴き惚れてるわよ。音楽的には5人ともすごく尊敬しているわ。

ー 中々アダルトな内容の歌詞だと思うのですが、ティーン向けアイドルが歌うには難しかったのでは。

A:そうだね(笑)。僕もそういったことに関する経験は決して豊富な方ではないし。だから実際に恋愛をしたらどんな風になるのかっていうのを想像しながら歌ったよ。レコーディング中に水沢さんに「ラスト・タンゴ・イン・パリ」って映画を勧められてそれを見たんだけど、そしたらなんだか方向性がわかってきたというか。エンニオ・モリコーネのスコアも最高だったし。

水:彼らはまだ10代だけど、それを理由に楽曲の幅を狭めるようなことはしたくなかったの。さっきアンソニーが言っていたように、若くてフレッシュで元気なポップスも大人の観賞に耐えうる渋い歌も、両方ともアルバムには入っているわよ。

A:ちなみにこの曲のレコーディング中はよくBabyfaceを聴いていましたね。オールドスクールなテイストがありながらも歌い方やアレンジがフレッシュで、僕が目指すR&Bそのものって感じだったので。

 

 

『It’s You And I』について

ー EPの最後の曲についてお伺いします。この曲は元々収録予定ではなかったとのことで伺っておりますが。

水:ええ、そうなの。この曲がここに収録されることになったのは完全に偶然、というかクリエイティビティの為せる悪戯みたいなものだったの。ご存知の通り、今回のEPはBNAの各メンバーの紹介を兼ねて彼らのソロ曲5曲だけで構成するつもりだったから。けど、EPの完成直前にちょっとした事件が起こったのよね。

ー 事件ですか?

水:そこまで大袈裟なものでもないんだけれどね(笑)。実はアタシにはプロデューサーとしてとても影響を受けている人がいるの。その人は今は完全にインディーズで活躍してるんだけれども、とても才能があって過去には複数のメジャーレーベルからもオファーがあった人で、けれど自分のアーティストとしての方向性やこだわりに応えられるレーベルがなかったみたいで結局インディーズで地道に活動をなさっててね。

ー その方とはお知り合いなのですか?

水:そうとも言えるしそうでないとも言えるわね。彼女、もしかしたら彼かもしれないけれど、便宜上今は彼女と呼ばせてもらうわ。彼女とはSNSで繋がっていて、時々やり取りをしたりはするけれど基本はお互いの音楽の趣味やアーティスト活動を静かに追いかけているだけの関係なの。実はそもそも、自分で作った曲でボーイバンドをプロデュースしようって思いついたのも彼女の活動にインスパイアされた部分があってね。アタシにとってはインディーズで自分の好きなように音楽活動をする先輩、目標という存在だったのね。けれど、このEP完成直前に、彼女に対してまたレーベルからオファーがあったっていうことを彼女のSNSで知ったの。あえて正直に申し上げるけれど、最初はショックだったわ。アタシはあくまで彼女のことを「頑張ればアタシでも同じ土俵に上がれる範囲でコツコツと活動をしている人」として見ていたから、それが急に手の届かない存在になりそうに感じて。おかしいわよね、元々手が届くとかそういう話でもないし、何よりこっちが勝手に意識していただけなのに(笑)。

ー それが水沢さんの創作意欲に火をつけた、と。

水:そういうことになるのかしらね。あの時は両頬を叩かれて目を覚まされた気分だったわ。それで思ったの、「今のままじゃダメだ。追いかけているだけでは彼女に一生追いつくことが出来ない」って。アートっていうものがそもそも競争とはかけ離れたものだけれど、「どれだけ自分のアートに真摯に向き合っているか」っていう本気度合いで言えばアタシは彼女の足元にも及んでいなかったの。なんだか色々悔しくてね。つい数週間前のことだとは思えないわ。ちょうど友達何人かと旅行に行っていて、朝ホテルをチェックアウトする前にロビーでSNSをチェックしてて彼女のそのニュースを知って、ホテルからの最寄りの駅で友達がお土産を探している間にアタシはメロディーを完成させて、帰りの電車の中で歌詞を完成させたの。

ー とてもスピード感を持って完成させられたのですね。

水:ええ。デモ用のバックトラックは次の日の夜には完成していたわね。で、急な展開だったけれどそれをEPに収録出来ないかBNAの5人に相談してみたの。デモと歌詞のデータを5人に送って、みんなすぐに賛成してくれたわ。

ー なるほど。それで、図らずもグループとしての最初の曲が出来上がった、というわけですね。

水:ええ、そうね。

ー この曲ではメインをティモシー・ベディングフィールドさんとケンイチ・マスナカさんが歌われていますがこの二人をメインボーカルにしようと思ったのはなぜですか。特にケンイチさんのパートは全て日本語で歌われていますし。

K:水沢さんから送られてきたデモの歌詞は全て英語だったんです。けど歌詞を見た時に、自分にとってすごく共感出来る内容の歌でどうしてもメインパートが欲しくて、そのことを皆に相談して。

T:基本的に誰がどの部分をメインで歌うかについて、水沢さんはよっぽどこだわりがない限り僕らに任せることにしてるんです。母語が英語でないケンイチは普段から他のメンバーに比べてパートが少なめなので、その彼が「メインを歌いたい」って言い出したのは最初はちょっとビックリしましたね。

D:ああ、確かにビックリしたよ。まだグループとしてまともな活動もしていないうえに、お互いのことも、番組以来ほぼずっと一緒にいるとはいえまだ1年も経ってないからよく知らないし、正直最初は「コイツ、そんなに目立ちたいのか」ってあまり良い気分じゃなかったよ。

S:目立ちたがり屋度合いで言えば君の右に出るものはいないと思うけどね(笑)。

ー 随分率直ですね、ディエゴ。

D:俺らはみんな、5人の中では誰に対しても正直になろうって決めているんだ。

K:最初に君に「そんなに目立ちたいのか」って言われた時はビビったけどね(笑)。

A:ディエゴはそういう約束がなくても正直にケンイチに不満をぶつけてたと思う。これは彼の性格ですからね。他のパートは4人とも同じくらいの分量録ってるんだけど、結果的にティミーのテイクがどれもすごくよかったから、ティミーがメインになっているのは結果論なんですよ。

T:みんなすごくうまいから、僕はこの曲も半分くらいはケンイチのソロ曲だと思ってるよ。

D:とにかく、最初俺ら、特に俺はケンイチがソロをとることに懐疑的だったんだ。けどケンイチのやつ、俺がそれを言うと日本語に直した歌詞を出してきてさ。

水:あれにはアタシも含めて全員がビックリしたわ。ソロ曲ならまだしもグループの曲に対してあれだけ大胆に自分のソロパートをたくさん要求してくるなんて。

D:ああ。けど、その日本語の歌詞に変えたバージョンをケンイチが歌った途端、皆しんと静まり返ってさ。歌い終わる頃にはみんなすっかり「この曲はケンイチのものだ」ってなってて。

S:日本語で歌う時のケンは本当に伸び伸びと歌ってるよね~。まるで別人みたいだよ。

T:それは確かにね。

A:ああ、俺もビックリした。

D:結局それで、半分はケンイチ、半分はティミーを中心に4人が歌うことになったんだ。完成したバージョンを聴いて、そうして良かったと心から思ったよ。

K:皆のおかげだよ。日本語のコーラスを入れるために日本語の勉強をしてくれたじゃないか。

A:日本語は独特で面白いから好きだよ。僕は新海誠とかの日本のアニメ映画が好きだから元々聞き慣れてたし。

ー メインをティモシーとケンイチがとった経緯はわかりました。ケンイチ、この曲にそんなに強いこだわりを感じたのはどの部分だったのですか。

K:皆も知っての通り、僕には有名な俳優である兄がいる。この曲を最初に聴いた時、僕が兄に対して常々思っている憧れや、そこから生まれる焦りみたいな感情とオーバーラップする部分がすごく多くて。多分水沢さんが、さっき話していた知り合いのプロデューサーさんに対して感じている思いと共鳴したんでしょうね、まるで僕が書いた歌みたいにストンて入ってきたんです。だから、どうしてもこの歌を、それも日本語で歌いたくて。

ー なるほど。

水:アタシの信条としては、「アートは自分の内側から湧き上がるものこそ美しい」の。だからアタシは無理やり「さあ、曲を書くぞ」みたいにはしたくなくて。それで、ケンイチが「どうしてもこれを日本語で歌いたい」って言って歌詞を書いてきた時、彼の内側から湧き上がったアーティストとしての美しさを信じてみることにしたの。さっきディエゴが言ったみたいに、皆大満足の出来になったわ。

S:レコーディングの時に歌い終わってブースから出てきたケンイチが泣き崩れたのにもビックリしたな(笑)。

K:ちょっとそれ言わないでよ(笑)。

ー 泣き崩れたんですか。

K:はい、お恥ずかしながら。感極まったというか、感情がオーバーフローした感じですね。

T:僕はあれを見た時に「この曲はすごいことになるな」って思ったよ。

ー 皆さんが仰る通り、素晴らしい楽曲だと思います。

K:ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。

 

これで質問は以上になります。今日はありがとうございました。最後に、このインタビューを読んでいただいているファンの方々に一言お願いします。

水:ボーイズの活躍は始まったばかりです。それぞれ音楽性がまるで違う5人がこれからどんな化学反応を見せてくれるのかアタシも楽しみにしています。皆さんも是非彼らのデビューEPを聴いて、これからの彼らに期待を寄せていただければと思います。

D:ファーストアルバムが出るまでの間、これを聴いて待っていてくれよな。ライブではこのEPの曲もやるだろうから、しっかり聴き込んで予習してな~。

T:『バンド・オフ!』の頃から僕らを応援してくれていた方も、このEPで初めて僕らを知ってくれた方も、いつもありがとうございます。これからたくさん良い曲をお届け出来るのが楽しみです。

S:僕らのファンの皆さん、いつもありがとうございます!EPなのでボリュームは少ないですが、気持ちはフルアルバム分くらい込めてるので是非楽しんでください!ライブやミーグリでみんなに会えるのが待ちきれないよ!!

K:えっと、みなさんありがとうございます。みなさんが応援してくれるから今の僕らがいます。すごく感謝してます。これからもよろしくお願いします。

A:ファンのみなさん、ファンじゃなくてたまたま曲を気に入ってくれた方も、みなさんありがとうございます。今の僕らに出来る全てを詰め込んで作った作ったEPです。楽しんでもらえたら嬉しいです。

ー 皆さん本日はありがとうございました。今後の活躍を楽しみにしています。

一同:ありがとうございました。

 

 

※1:アメリカで放送されているティーン向けアイドルユニットを結成・育成するリアリティー番組。今年で放送10年目をむかえる。

 

※2:アメリカで放送されているソングライターのためのリアリティー番組。ディエゴは『ザ・ライト・スタッフ』の予選で落ちた後、『バンド・オフ!』に出場する決心をした。

 

※3:ケンイチの兄は俳優のタク・マスナカ。主な出演作は『アフタースクールバンディッツ』、『共通の秘密』等。『DIVAはせっかち』にてゴールデングローブ賞ドラマ部門にノミネートされる。

 

※4:『バンド・オフ!』シーズン5にて優勝した5人組ボーイバンド。「#queenofwhatever」「Fell in Love with a Fool」等の曲が有名。